「とりあえず法人化」することのメリット

By | September 30, 2019

アイディアはある。スタートアップを立ち上げるかどうかは悩んでいる。試作をやったり実験はしてみたいと思っている。

そういう状況ならとりあえず法人化はするべきだ。

いくつか明確なメリットがあり、デメリットは金がかかることくらいだ。
まず多くの人が誤解してそうなことを正しておこう。

<登記にはほとんど時間はかからない>
具体的な内容は様々なブログポストや地方自治体の説明ページがあるので確認して欲しいが、 – 印鑑作る – 会社名考える – 法人の銀行口座を作る くらいかな、めんどいのは。 ちなみに私は4/3にやんなきゃなぁと思って4/5に登記した。

<会社を作ってしまっただけなら税務処理は大変ではない>
とりあえず立ち上げただけの会社なら、まず税理士を雇うまでもない。 青色申告はするべきなので帳簿はちゃんとつけないといけないけど、それならマネーフォワードとかfreeeとか既存サービスを使うだけで十分にできる。 法人税の申告も、内容が増えてきたらプロに任せるべきだが、その手前にいる限りは実は自力で可能だ。 細かいことを言い出すと税務アドバイスと取られるので(違法)ここではこのくらいにしておく。
ということで法人化自体はさほど大きな問題はないのだ。 手続き一般にかかる20万円程度が一番の重みだろうか。

さて、メリットについて整理したい。大別すると以下のとおり。
– 実務的なメリット
– 税務的なメリット
– 精神的なメリット
についてだ。

<実務的なメリット>
法人化すると外から見てステークホルダーがハッキリする。 仮に誰かがあなたのビジネスプランに興味を持って出資を検討してくれたとする。エンジニアメンバーやアドバイザーがどんだけいようと要するにまず確認しなければならないのは株主および創業メンバーだ。 登記するということはそれらについて数字でしっかりと記載しなければならないのでもはや議論の差し込みようが無い。
しかし仮にあなたのステータスが「起業する予定はあります。タイミングは未定です」だとすると、外部の人間からしたらステークホルダーが読めない上に、自分たちがどういうサポートをしたらあなたの会社のためになるのかがパッとわからない。
非常に実務的な混乱を招くかもしれない。 仮でもなんでも決めておいてあとで変更する方が何も決めないより遥かに良い、というのは大抵の世の中のことにおける定石だ。

<税務的なメリット>
細かいことは専門書に任せるが、大きなメリットは損金の繰越だ。
赤字は向こう3年間繰り越すことができる。 会社を起こすとわかるが、結構いろんなことが経費=損金なのだ。
つまり、今年起業してそこから物品の購入、移動、技術調査の費用、学会登録費、もろもろは損金である。 当然当初は売上なんてないわけだからど赤字になるわけだが、仮に次の年に成功して利益が出たとしても、去年の損金の積立は今年の利益から差し引くことができる。したがってうまく帳尻が合えば法人税は払わなくて良い。 重要なことは法人化するということは「法人化によるメリットを享受する準備ができている」ということであって、これは単なる個人の活動のレベルから大きな違いをもたらす。基本的な考えとして

起業する人がいなくなったら経済が終わる

ということは政府官僚含めガバメント側の方々はよく知っていることなので、そういう意味では法人化は優遇されることだらけなのだ。ぜひ有効利用して欲しい。
また他の視点では「2期分の消費税の免除」というのが会社設立時のメリットとしてあって、これは「すぐに売上が立つ見込みがある場合」は確実に取っておきたい。 だが、当初売上の目処が立たないスタートアップが、満を辞して「今から2期分免除だ!」と創業したものも実際は大した売上が立たず、、だった場合にはかっこ悪いことこの上ないですし、売上1000万円以下は継続的に消費税は免除なので、これのメリットに配慮して創業をズラすってのは少々ナンセンスかなぁと思う。

<精神的なメリット>
一点は「慣れ」だ。

一般に起業というとなんかとんでもないことに踏み入れているかのように聞こえてしまうが、その実、起業とはこれまでの人類の営みの中で何度も至る所で日常的に繰り返されてきたことだ。
なんでも「平社員=肩書なし」以外で日本の人口のうち最も多い肩書は「代表取締役社長」だとどこかの本で読んだ。本当か嘘かはわからないが(その程度の信頼性の本だったので)とはいえ言い得て妙である。日本の開業数は年間10万件から13万件程度だそうな。つまり人口の1000人にひとりは「今年起業する」のだ。年齢層をある程度限定的に考えれば500-600人に一人が今年起業しているとも言える。私の中学校は学年200人程度だったので、2, 3年にひとりは中学の同級生の誰かが起業しているという数字になる。その程度の出来事なのだ。

大した話じゃない。とりあえず法人化して社長になってしまおう。

また、法人を作ることで法人を作るメリット(既に述べた)が身をもってよくわかるようになる。これは一生使える財産だ。 一度社長になるとやれ子会社、やれ合弁会社と次々に作る人は多い。慣れてしまえば大したことではなく、かつメリットがあるのだからそれを使わない手はないと皆気付くのだ。

もう一点は「やるやる詐欺防止」だ。

私も大手企業サラリーマン時代があったのでよくわかるのだが、優秀な人間など周りに腐る程いるし、希望に燃えていたり野心があったり物事を俯瞰的に捉えている、将来を見据える能力に長けている人間もそれなりにいる。でもその中から大きな差がついていく。
「やる人」と「やらない人」だ。
やる人はやり続ける。それがさも当たり前かのように。他の選択肢など無いかのように。
やらない人はいろいろ言うだけで結局やらない。毎度やらない。何かしら理由を見つけてはやらない。
やる人はやったあとでケツをまくることもあるし、てひどい失敗をしながらテヘペロすることもあるし、突如全く違う方向性で「相変わらず」やり続けたりする。
やらない人は停滞する。変わらない。今年も来年も再来年も変わらない。ずっと変わらない。
とりあえずやってから反省しろ。以上だ。

こんな文章を読んだだけで10人中9人が「明日法人作ろう!」と思うわけがないことくらい知っている(仮にもしそれが実現したら私の活動に対して経済産業省から資金提供してもらいたいものだ)なので「とりあえず法人化する」ということ自体を知らない人への微力ながらメッセージになれば幸いだ。


> Author Profile
九頭龍 雄一郎 Yuichiro “kuz” Kuzuryu
エンジニア/経営者
日本の大企業での新事業立ち上げからシリコンバレーのスタートアップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。
株式会社ClayTech CEO, Founder
株式会社EYS-STYLE 取締役
株式会社144Lab 取締役
東北大学客員教授
その他複数社の技術顧問、アドバイザーを務める
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