株式取られんなよ

By | September 24, 2019

スタートアップのみに限らず、全ての株式会社の経営者にとって株式比率はとても重要だ。 そんなことは小学生でも知っているが、大事なことは

「出資を受けた時にどう振る舞うべきか」 だ

当然ステージによる。 ステージについて簡単に定義を表明しておくと(学術的なものは専門書に任せる)ざっくり
・シード(まだ市場はよくわからんがコンセプトおれすげぇ!)
・シリーズA(市場ローンチができたかその目の前)
・シリーズB(ローンチはできてるのでスケールさせたい。ビジネス的には国外展開だったり、新規事業の挑戦だったり)
・シリーズC以降(こっからは便宜上。特にCとかDとかEとか意味はない)
シリーズB以降は成り行きな部分もあるが、シードやシリーズAでリードを取ってくれたインベスター(各ステージを取り仕切ってくれた投資家やVC)がサポートしてくれるからそんなに強く警戒する必要はない。(とここでは言っておく。シリーズB以降の怖さもあるがそれはまた別の機会に)
つまりここではターゲットをシードとせいぜいシリーズAまでにしよう。なぜなら私にアドバイスを求めてくる方々はだいたいこのステージだからこのブログを読んでいる方のニーズともきっと整合性があると信用できる。
まず大事な一点

「利害関係のない誰かに相談すること」

これは客観的な意見を求めろ、という意味だ。 端的に言うと、大抵のスタートアップ創業者は初期の株式を「不利な比率」で引き渡しすぎだ。ここは経験者とそうでないものの差が圧倒的に出る。私がアドバイスを求められた際に「うーん、今プロトがこのレベルに来てて◯円の出資なら◯%くらいでいいんじゃないの」と返答すると「え?そんなもんでいいんですか?」と言われることは多い。逆ギレされることすらある。「そんなの絶対無理ですよ!そんなこと言ったら折角掴まえた投資家に逃げられちゃいます!何言ってるんですか!」という調子で。

これは典型的なサンクコストのry(皆まで言うまい)だ。

学生同士の友人で立ち上げたスタートアップ、それぞれが大手企業で一端の若手として活躍し、将来を嘱望されている環境でありながらそれを捨てて飛び出したスタートアップの領域。ビジネスモデルは上々、エンジニアも信頼できる人間を確保しプロトの目処も立っている、でもお金ばかりは今のタイミングでなんとか調達したい、、、あるあるだ。

よくわかる、よくわかる。でも、そここそが辛抱なんだわ。

投資家は金融屋でありある種の相場のプロである。いかに安く大量に仕入れて売り時で高く売るかが商売の肝であり、それ自体は極めて資本主義の象徴的行為だ。東インド会社以降、「株式会社」というリスクの共有化のシステムに対して出資する貴族や財閥の力が無ければ産業革命以後の加速度的な技術革新は起こらなかっただろうし、投資銀行の発達が無ければかつて社会主義的発想が跋扈した時代に資本主義がよもやの不覚をとることもあったかも知れない。それらは大いにリスペクトに値するし、とても素晴らしい史実だ。
だが、ここでは商売相手なのであくまで強かにいかなければならない。 しかし「したたかに」と言われても困るだろう。だから聞くのだ。人に。経験者に。
シンプルだろう。スタートアップの経営者であれば直近で調達に成功した立場の近しい人がいるだろう。既にシリーズA、Bと調達を進めている先輩もいるかも知れない。彼らに聞けばよい。彼らなりの失敗と成功を。 そうすることで相場感や自分たちの求めているものと求めていないものが見えてくる。答えは、私はアレコレ言いたくないので自分で探して欲しい。
次に大事な一点

「エクイティファンディングが全てと思うなよ」

当然意味そのもので言えば株式の引き渡しによる資金調達だけでなく、デット(借り入れ)も視野に入れろという意味でもあるし、助成金や各種補助などを活用しろという意味でもある。あとは初期はエンジェル投資家のサポートも重要さも無視できない。 エンジェルは自分でそう名乗っている人もいれば(日本は少ないらしいけど)要するに単なる資産家という人もいる。エンジェル=天使の所以は彼らはほとんど株式を取らないからだ。(これはあくまで私見だが、もしエンジェルと名乗るものがシード出資の数百万で30%も40%も株を欲したとしたら、それは間違いなく天使の皮をかぶった悪魔だ。賭けてもいい)彼らはシリーズAとかBとかある程度希薄化された時期で見ると、大抵1%とかせいぜい数%の株式しか持っていない。そのくせ数百万、場合によっては千万の出資をしていたりする。ホントに天使以外の何物でもない。(まぁバリュエーション上げ過ぎない工夫は必要だが) さて、要するに大事なことは

君たちの目の前で必要な金は所詮大したことない「はした金」であってそれを引き換えに魂=株式を売るほどの価値はない。 まぁ、そう言われてスッと納得いかなくとも、ちょっとこれ読んだら立ち止まって考えてみな

ということだ。 他にエクイティローン(金を返せば株は取られないし、返済期限も金利もめちゃくちゃ優遇されている)もあればしばらくは外注仕事を請けるというような選択肢もある。サラリーマン起業も立派な選択肢だ。視野を狭め過ぎて安売りしないように注意。
続けて「なんでそんなに気にしなきゃいけないんだよ(めんどくさ)」という疑問(不満)に対する返答をもって〆る。 まずは一般的な観点から

33%の壁にいつどう当たるかわかってるやつなんていないんだから初期は十分過ぎるほど用心しなさい

33%は拒否権である。過半数を割るくらいは仕方ないが、拒否権がなくなると実質的に他の株主たちが徒党を組んだらいつでも誰でもクビになるどころか事業内容もひっくり返せてしまえるということだ。これは非常におっかない話だ。当然多くの企業の経営者が33%など切っている。しかしそれはあくまで「安定して収益を上げている企業」だ。毎年伸るか反るかの勝負をする中で「今年でクビかも」と思っていたら思い切った勝負などできない。論外である。
さて次に個人的な観点から

VCとか個人投資家のおっさんとかどうでもいいからあなた達がミリオネラ・ビリオネラになりなさい

IPOすると株主の名簿と比率が公開される。見ようと思えば端から端まで見れる(それがまさに公開) 本質的にはそんなに好きなシロモノではないので、あくまにたま〜にだが興味があるときは私も目を通す。そしてまぁそれなりの確率で陰鬱した気持ちになる(だから見たくない) つまりは「なんでこいつこんな比率持ってるの?」と「なんでこいつこんなに比率低いの?」だ。とてもシンプル。 当然社内の事情は私は何も知らないし、歴史も、せいぜい業界で流れる噂話程度しか知らない。しかし、明らかにおかしいレベルの大量の株式をVCが持っていたり(出資金額と時期は大抵元々公開されているので勝手になんとなくイメージを持っている)学生起業の「若き天才エンジニア!」が信じられないくらい雀の涙しか持っていなかったりする。

甚だ残念である。

当然『多く持っていた方』はビジネス的に言えば「巧くやった」のであって評価されて然るべき(上場までこぎつけているのだからその評価が揺らぐことはない)なのだが、私はそちら側の方々からアドバイスを求められることは極めて少ないので、基本的には経営者側に立った発言をさせていただくとする。そうすると、甚だ残念であると言わざるを得ない。 スタートアップ業界というのは業界全体で言うと半ば互助会のようなところがあって、誰かが「スタートアップ業界なんてない」と言っていたがシリコンバレーにはそれがあったように思う。人材の融通であったり、資金の融通であったり、情報の共有であったり、トレンドをある種共同体として作り上げる枠組みであったり。別の言葉で言えば「エコシステム」が強固に存在した。 その点でも特に資金面でのサポートはリスクの分散化であり、資金のある人間がそれを担う仕組みはまさに株式会社の思想そのものだ。しかしそこに「将来への投資」を何故思想として組み入れることができないのだろうか。

VCとか個人投資家のおっさんとかどうでもいいからあなた達がミリオネラ・ビリオネラになりなさい

リスクとリワードという考え方がアメリカ人(少なくともシリコンバレーの人間たち)は好きだった。 ではスタートアップを立ち上げる時に最も大きなリスクを冒している人間は誰だろうか? 比較する軸によって当然異なるため、一般にはそう単純な話ではない。 しかしここではあえて以下のように単純化してみたい。

持てるもののうちからどのくらいを出したか

創業者は大抵の場合で金もなく、地位もない。あるのは時間と可能性くらいだ。 それらを100%賭けてくる人間に対してのリスペクトを忘れてはならない。 逆に総資産数百億のおっさんが仮に3000万円出したときはどうだろう。3000万円は一般庶民にとっては多額の資金だし、創業間もないスタートアップにとってはしばらく走るだけの大切なキャッシュだ。だが、その資産家のおっさんにとってははした金であるのは間違いない。言葉が悪いな。「投資資金のごくごく一部」であるのは間違いない。 例えばこの瞬間に株式持分比率が6:4になっていたとしたら皆の目にどう映るだろうか? 札束で頬を叩くような行為だ。あまり多くのリスペクトを持って迎えることはできない。

これが資本主義の原理原則からすると違和感のある話であることは重々承知している。 しかし「どう成功させるか」「どう未来を作り出すか」が主眼である「スタートアップ業界」としては、どのような形で成功事例を蓄積し、今後の種を仕込んでいくか、真面目に考えて日々振る舞うべきだと私は思う。
それがエコシステムを発展させ、競争力を作る。
なおGoogleの初期メンバーの大半はIPOの際に得た大金を元にエンジェル投資家となっているらしい。
そこら辺、厚みが違うのだ。


> Author Profile
九頭龍 雄一郎 Yuichiro “kuz” Kuzuryu
エンジニア/経営者
日本の大企業での新事業立ち上げからシリコンバレーのスタートアップまで多種多様な千尋の谷に落ちた経験を持つ。
株式会社ClayTech CEO, Founder
株式会社EYS-STYLE 取締役
株式会社144Lab 取締役
東北大学客員教授
その他複数社の技術顧問、アドバイザーを務める
https://twitter.com/qzuryu
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